ローカルRAG構築向けPC構成ガイド 2026年版:埋め込みモデル + ベクトルDB + LLM を1台で動かすVRAM配分と必要スペック
社内ドキュメント検索やナレッジBotをローカルで完結させるRAG構成を解説。埋め込みモデル・ベクトルDB(Chroma/FAISS/Milvus)・LLMを同一GPUに同居させるVRAM配分の考え方、12GB/16GB/24GB/48GBで何が回るか、競合を避ける構成例を実数値で示します。
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結論:RAGを1台で完結させるVRAMの主役はLLMで、埋め込みモデルとベクトルDBはおまけ程度しか食わない。 12GBなら7〜8B級のLLMで小規模検索、16GBで余裕を持って8B、24GBで14B級、48GB(24GB×2枚)で32〜70B級が現実的な目安です。RAGと聞くと「埋め込みもベクトル検索もGPUを食うのでは」と身構えがちですが、実際にVRAMを圧迫するのはLLM本体とそのKVキャッシュで、埋め込みモデル(数百MB)とFAISSインデックス(百万件でも数GB)は誤差の範囲です。だから構成を決めるときは、まず「動かしたいLLMの規模」から逆算するのが最短になります。
社内ドキュメント検索やナレッジBotをクラウドに出さずローカルで完結させたい、というのがRAGをローカルで組む最大の動機です。この記事は「どのGPUを選ぶか」ではなく「RAGという三層構成(埋め込み+ベクトルDB+LLM)を1枚のGPUに同居させたとき、VRAMがどう取り合いになるか」に絞ります。LLM単体の最低スペックはローカルLLMを動かすPCの最低スペック、容量別に何が載るかの早見表はVRAM容量別モデル早見表に分けてあるので、本記事はRAG固有の配分問題に集中します。
RAGの三層構成とVRAMの食い方
ローカルRAGは大きく3つの部品でできています。
| 部品 | 役割 | VRAM/メモリの食い方 |
|---|---|---|
| 埋め込みモデル | 文章をベクトル(数値の列)に変換 | 小さい(300MB〜、大きくても16GB) |
| ベクトルDB | ベクトルを保存し、近いものを高速検索 | 非常に小さい(百万件で数GB、CPU/RAMでも可) |
| LLM | 検索した文書を読んで回答を生成 | 大きい(主役。8BでQ4約5GB+KVキャッシュ) |
ポイントは、検索パイプライン(埋め込み+ベクトルDB)はフットプリントが小さく、回答生成のLLMだけが大きく重いという非対称性です。RAGの体感品質を決めるのは「検索の精度」と「回答の賢さ」ですが、ハードを圧迫するのは後者だけ。だからVRAM配分は「LLMにいくら割けるか」で決まり、埋め込みとベクトルDBは常に共有GPUに常駐させても困りません。
埋め込みモデルの選び方
埋め込みモデルは「文章を意味のベクトルに変換する」係です。RAGの検索精度はここで8割決まりますが、サイズは小さく、選択の自由度が高い部品です。
| モデル | MTEBスコア | 最大トークン | サイズ目安 | 向き |
|---|---|---|---|---|
| nomic-embed-text | 約62.4 | 8192 | 約300MB | 長文・CPUでも軽快・万能の入門 |
| mxbai-embed-large | 約64.7 | 512 | 約700MB | 英語中心・短いチャンク |
| Qwen3-Embedding-8B | 約70.6 | 32K | F16で16GB / Q4で4〜6GB | 多言語・日本語・精度最優先 |
実務的な選び方はこうです。まずnomic-embed-textで組みます。8192トークンの長文に対応し、CPUでも軽く動き、VRAMをほぼ食わないので「とりあえず検索が回る状態」を最短で作れます。日本語の検索精度に不満が出たらQwen3-Embedding-8Bへ上げます。MTEB 70.58は現行OpenAIの埋め込みすら上回る水準で、多言語・長文に強い一方、F16では16GB VRAMを要求するので、GPUが厳しければQ4量子化(4〜6GB)で載せます。英語ドキュメントしか扱わず、チャンクが512トークンに収まるならmxbai-embed-largeが軽くて速い選択肢です。
注意点として、埋め込みモデルは後から変えると全文書をベクトル化し直す(再インデックス)必要があるため、本番運用に入る前に決めきるのが安全です。検証段階で複数試し、日本語精度で当たりを付けてから固定しましょう。
ベクトルDBの選び方
ベクトルDBは「埋め込んだベクトルを保存して、質問に近い文書を高速に引っ張る」係です。ここは件数で機械的に選べます。
| ベクトルDB | 得意な規模 | 特徴 |
|---|---|---|
| Chroma | 〜数万件 | 設定不要・pip一発・個人検証/プロトタイプの定番 |
| FAISS | 数十万〜百万件 | 単一マシンで高速・GPUにも載せられる・ライブラリ型 |
| Milvus | 百万件超 | 本番分散・スケール前提・運用は重め |
FAISSのインデックスがどれだけVRAM(またはRAM)を食うかは単純な掛け算で見積もれます。ベクトル数 × 次元数 × 4バイト(float32) が素のサイズで、たとえば100万件 × 768次元なら 1,000,000 × 768 × 4 ≒ 3GB です。768次元の埋め込みなら百万件でも3GB程度で、LLMの隣に置いても邪魔にならないのが分かります。量子化インデックス(IVF-PQなど)を使えばさらに圧縮できます。
最初はChromaで組んで動作を確認し、件数が数十万を超えて検索が遅くなってきたらFAISSへ、百万件超で複数マシンに分散したくなったらMilvusへ、という段階移行が無駄がありません。個人・小規模チームのナレッジBotなら、Chroma/FAISSの範囲で完結するケースがほとんどです。
VRAM配分:12 / 16 / 24 / 48GBで何が回るか
ここが本記事の核心です。RAGの合計VRAMは次の足し算で考えます。
LLM本体 + KVキャッシュ(コンテキスト長ぶん)+ 埋め込みモデル + ベクトル検索
埋め込み(〜数百MB)とベクトル検索(百万件で〜3GB)は小さいので、実質は「LLMにいくら残せるか」の勝負です。
| VRAM | 推奨LLM | 同居構成の現実 |
|---|---|---|
| 12GB | 7〜8B(Q4_K_M、約5GB) | チャットモデル常駐中の大量インデックス作成は競合。検証〜小規模なら可、両方フルスピードは不可 |
| 16GB | 8B(余裕)/ 一部14B | LLM 8B + 埋め込み + FAISSを同時常駐しても余裕。個人ナレッジBotの実用ライン |
| 24GB | 14B級 | 14BのQ4+長めのコンテキスト+検索を快適に同居。回答品質を一段上げたい人向け |
| 48GB(24GB×2) | 32〜70B級 | 70B級の高品質回答とRAGを両立。社内向けの本格運用 |
12GBの落とし穴を具体的に言うと、8BのチャットモデルがQ4で約5GBを占有している状態で、大量の新規文書を一括ベクトル化(インデックス作成)しようとすると、埋め込み処理とLLMがGPUを取り合い、どちらもフルスピードが出ません。「初回の大量インデックスはCPUで回す→検索・回答だけGPU」のように時間軸で分ける運用なら12GBでも実用になりますが、常時両方を高速で、を求めるなら16GB以上が安心です。
16GBが個人RAGの実用ラインと考えてよいでしょう。8BのLLMを常駐させたまま埋め込みモデルとFAISSを同居させても余裕があり、RTX 5060 Ti 16GBクラスで十分組めます。回答品質を14B級へ引き上げたいなら24GB、70B級の本格運用なら48GB(24GBを2枚)という階段です。複数GPUでVRAMを束ねる場合のハード前提はワークステーションPC構築ガイドのマルチGPUの項も参考になります。
最短で動かす構成(ソフト導線)
ハードが決まったら、ソフトは「全部入りで迷わない」組み合わせから始めるのが速いです。
- Ollama 一本:埋め込みもLLMもOllamaで動かせます(
ollama pull nomic-embed-textとollama run llama3.3)。最小の手数でRAGの両輪を揃えられる入門ルート。 - LM Studio + LangChain + Chroma:GUIでモデルを管理しつつ、LangChainでRAGパイプラインを組み、Chromaに保存する定番構成。コードを書きながら仕組みを把握したい人向け。
実行ツールそのものの比較(Ollama / LM Studio / llama.cpp / vLLM)はローカルLLM実行ツール比較に詳しくまとめてあります。RAGを本番でチームに提供し、並列リクエストを捌くフェーズに入ったら、回答LLMをvLLMでサービングする構成へ移ると並列スループットが伸びます。
GPUなし・RAM16GBでも、3〜7BのLLM+nomic-embed-text+Chromaで「RAGとは何か」を体感する検証は十分可能です。まずCPUで仕組みを掴み、回答の遅さが気になったらGPUを足す。この順番が、無駄な買い物を避ける現実解になります。
まとめ:LLMから逆算してVRAMを決める
ローカルRAGの構成は、三層のうちLLMだけがVRAMの主役という非対称性さえ掴めば一気に簡単になります。
- 埋め込みモデルは小さい(nomic-embed-textで約300MB)。まず軽いもので始め、日本語精度が欲しくなったらQwen3へ
- ベクトルDBは件数で選ぶ(Chroma→FAISS→Milvus)。FAISSは「件数×次元×4バイト」で見積もれて百万件でも数GB
- VRAMは「動かしたいLLMの規模」から逆算。16GBが個人RAGの実用ライン、24GBで14B、48GBで70B級
「RAGは重そう」という先入観でオーバースペックなGPUを買う必要はありません。動かすLLMを8Bに決めるなら16GBで快適に回り、検索パイプラインはその隙間に余裕で同居します。
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よくある質問
- ローカルRAGはGPUなしでも動く?
- 動きます。埋め込みモデル(nomic-embed-text など)とベクトルDB(Chroma/FAISS)はCPUとRAMだけでも十分実用的で、検索部分はGPUがなくても遅くなりません。ボトルネックは回答を生成するLLM側で、CPU推論だと7Bクラスでも体感が重くなります。RAM16GBあれば3〜7BのLLMで検証は始められますが、快適に使うなら12GB以上のVRAMを持つGPUを足すのが現実解です。
- RAGに必要なVRAMはどう見積もる?
- 「LLM本体 + KVキャッシュ + 埋め込みモデル + ベクトル検索」の合計で考えます。主役はLLMで、8BをQ4_K_Mで動かすなら約5GB、これにコンテキスト長ぶんのKVキャッシュが乗ります。埋め込みモデルは小さく(nomic-embed-textで約300MB)、FAISSのインデックスも100万件×768次元で約3GBと小さいため、配分の主導権は常にLLM側が握ります。12GBは7〜8B級、16GBで余裕、24GBで14B級、48GBで32〜70B級が目安です。
- ベクトルDBはChroma・FAISS・Milvusのどれを選ぶ?
- 件数で決めます。数万件までの個人検証やプロトタイプならChroma(設定不要で即使える)、数十万〜百万件を単一マシンで高速検索するならFAISS(GPUにも載せられる)、百万件超や本番の分散運用ならMilvusです。最初はChromaかFAISSで始め、データ量が増えてからMilvusへ移行して問題ありません。
- 埋め込みモデルは何を使えばいい?
- 日本語を含む多言語で精度を最優先するならQwen3-Embedding-8B(MTEB 70.58で首位級、ただしF16で16GB VRAM・Q4で4〜6GB)、軽さと長文対応のバランスならnomic-embed-text(8192トークン対応・約300MB・CPUでも軽快)、英語中心で短いチャンクならmxbai-embed-largeが定番です。迷ったらまずnomic-embed-textで動かし、検索精度に不満が出たらQwen3へ上げるのが省コストです。