AMD ROCm は CUDA に追いついたか 2026年版:ローカルLLM・AI開発でのソフトウェア対応状況と詰まりどころ
AMD ROCm は NVIDIA CUDA にどこまで追いついたのか。2026年の llama.cpp / vLLM / Ollama / PyTorch の ROCm 対応状況、ROCm 7.2 でのパリティ達成、RDNA4 での落とし穴、そして帯域あたり tok/sec に残るソフト成熟度ギャップまで、ローカルLLM視点で整理します。
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結論:2026年、ROCm の対応”範囲”は CUDA とほぼパリティに達しました。ROCm 7.2(2026年3月)で Ollama / LM Studio / llama.cpp / vLLM が回避ハックなしで動くようになり、「AMD は AI で動かない」という長年の評価は過去のものになりつつあります。ただし”性能の出方”と”トラブルの少なさ”はまだ CUDA 有利。特に RDNA4 での vLLM は FP32 フォールバックという落とし穴があります。要するに「AMD で AI を組むのは2026年には現実的、ただしランタイム選びを間違えなければ」というのが正確な評価です。
「AMD の GPU でローカルLLMを動かしたいが、ROCm って結局ちゃんと使えるのか」。Strix Halo や Radeon AI PRO R9700 のようなコスパの良い AMD ハードが増えるほど、この疑問は切実になります。この記事はハードの比較ではなく、それらが共通して依存するROCm というソフトウェアスタックそのものが、CUDA に対してどこまで追いついたか/どこで詰まるかを整理します。
数値・対応状況は Phoronix / AMD 開発者ブログ / llama.cpp リリースノート / 各種2026年レビューの公開情報を集約したものです。断定しすぎず、用途依存である点も併記します。
2026年の対応状況マップ:主要ランタイム
まず「動くか動かないか」の対応状況です。ここはほぼ埋まりました。
| ランタイム | ROCm 対応状況(2026) | 備考 |
|---|---|---|
| llama.cpp | ◎ ネイティブ(HIP) | FlashAttention-2 カーネルが RDNA/CDNA でマージ済み |
| Ollama | ◎ ROCmビルド公式 | RDNA3/RDNA4 を直接検出、回避ハック不要 |
| LM Studio | ◎ 対応 | ROCm バックエンドを選択可 |
| vLLM | ○ 対応(ただし注意) | RDNA4 で FP32 フォールバックの落とし穴あり |
| PyTorch | ◎ ROCmビルド有 | 主要な学習・推論コードが動く |
| JAX / Triton | ○ ROCmビルド有 | 対応は進むが情報量は CUDA より少ない |
ROCm 7.2(2026年3月)が転機でした。この版で Ollama / LM Studio / llama.cpp / vLLM がout-of-the-box(追加設定なし)で CUDA とパリティに達したと、Phoronix・AMD 開発者ブログ・llama.cpp リリースノートが揃って報告しています。具体的には次の3点が大きい。
- Ollama が RDNA3/RDNA4 を直接検出。RX 7900 XTX や RX 9070 XT で必要だった
HSA_OVERRIDE_GFX_VERSIONのハックが不要になりました。 - llama.cpp の FlashAttention-2 が ROCm(HIP)でマージ済み。長コンテキスト推論にかかっていたペナルティが解消されました。
- 4bit(INT4)推論カーネルが一級市民に。Q4_K_M の GGUF が、帯域律速のワークロードでは RX 7900 XTX で RTX 4090 に近い速度を出す報告も出ています。
「対応しているか」という問いに関しては、2026年の答えはほぼ「はい」です。
詰まりどころ:RDNA4 での vLLM フォールバック
ただし、ここが本記事で一番伝えたい注意点です。vLLM は2026年5月時点で RDNA4(gfx1201)のネイティブカーネルに未対応です。
RDNA4 GPU(RX 9070 XT など)で vLLM を動かすと、FP32 デクオンタイズへ静かにフォールバックします。エラーは出ないのに、ハードのAIアクセラレータを使わず、量子化の利点も活かせないまま遅くなる。一番たちの悪い「動くけど遅い」状態です。ログに警告が出ないため、気づかず「AMDは遅い」と誤解する原因になっています。
回避策は明快です。
- Ollama の ROCm バックエンドを使う(RDNA4 を正しく検出して動く)
- llama.cpp を HIP でコンパイルして使う(ネイティブで量子化が効く)
- vLLM をどうしても使うなら、RDNA4 ではなく対応の進んだ世代を選ぶ
RDNA4 で「思ったより遅い」と感じたら、まず vLLM を疑い、Ollama か llama.cpp に切り替えてください。ランタイムを変えるだけで体感が一変するケースが大半です。各ランタイムの選び分けは「ローカルLLM実行ツール比較 2026年版:Ollama / LM Studio / llama.cpp / vLLM を速度・対応モデル・使いやすさで選ぶ」で詳しく扱っています。
性能:帯域律速なら近い、しかし成熟度の差は残る
「対応範囲」がパリティに達した今、残る差は性能の出方です。ここは一律に語れないので、ワークロード別に分けます。
- 帯域律速の単純な生成(decode):差は小さい。Q4 量子化モデルなら、RX 7900 XTX が RTX 4090 に近い tok/sec を出す報告があります。トークン生成は基本的にメモリ帯域で決まるため、ハードの帯域が近ければソフトの差は出にくい。
- 演算が重い処理・特定のワークロード:CUDA が依然先行する場面が残る。プロンプト処理(prefill)や複雑なバッチ処理など、カーネルの最適化成熟度がものを言う領域では、最適化年数の差(CUDA 約18年 vs ROCm 約4年)がまだ表れます。
- コスパ視点:RX 7900 XTX は約$750〜900 で RTX 4090 の約75%の推論速度、という評価があります。価格を考えれば「帯域あたり・価格あたり」では十分に戦える水準です。
注意したいのは、「帯域あたり tok/sec で CUDA比 約2倍の差がある」といった数字が一部で語られる点です。これはソフト最適化が効く特定ワークロードでの話で、帯域律速の素の生成にそのまま当てはまるわけではありません。モデル・量子化・ランタイム・GPU世代に強く依存するので、「自分の使うモデルとランタイムでどうか」を実測で確かめるのが結局いちばん確実です。
CUDA との使い分け:2026年の現実的な指針
| あなたの状況 | おすすめ |
|---|---|
| とにかく確実に・つまずきたくない | CUDA(NVIDIA)が依然無難 |
| Linux で自前ホームラボ・コスパ重視 | ROCm(AMD)は十分現実的 |
| Q4 量子化モデルの生成が主目的 | ROCm でも帯域が近ければ遜色なし |
| vLLM を本番マルチユーザーで使う | RDNA4 は避けるか Ollama/llama.cpp に |
| fine-tune・最新研究コードをそのまま動かす | CUDA が情報量・互換で有利 |
2026年の結論はこうです。ROCm は「動かない」フェーズを完全に抜けました。 Linux で組むなら AMD は正当な選択肢で、フォークを自前管理しなくても本番のマルチユーザー推論サーバーすら AMD で立てられます。一方、「絶対につまずきたくない」「最新の研究コードを無改造で動かしたい」なら、情報量と互換性でまだ CUDA が無難です。
AMD ハード側の具体的な選定は「AMD Radeon AI PRO R9700 32GB はローカルLLMで買いか 2026年版:RTX 5090・RTX 5080と tok/sec・VRAM・価格で比べる」、Strix Halo での VRAM 割り当てと ROCm/Vulkan の実セットアップは「Ryzen AI MAX+ 395(Strix Halo)VRAM割り当て・初期セットアップ完全ガイド 2026年版」を参照してください。
まとめ
- 対応範囲:ROCm 7.2(2026年3月)で Ollama / LM Studio / llama.cpp / vLLM が CUDA とほぼパリティ。回避ハックも RDNA3/RDNA4 で基本不要に。
- 性能:帯域律速の生成なら CUDA と近い。演算が重い処理では成熟度の差が残る。用途依存。
- 詰まりどころ:RDNA4 での vLLM が FP32 フォールバック。Ollama ROCm か llama.cpp HIP で回避。
- 指針:Linux・コスパ重視なら ROCm は現実的。確実性・最新研究コード重視ならまだ CUDA が無難。
「AMD は AI で動かない」はもう古い認識です。ただし「何でも CUDA と同じように動く」とまでは言えない。この中間の現実を踏まえてランタイムを選べば、2026年の AMD は十分に戦えるプラットフォームです。
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