なぜStrix Halo・Apple Siliconはメモリ増設できないのか 2026年版:LPDDR5Xオンパッケージとオンボード半田付け、DDR5 DIMM/SO-DIMMの違い
「GMKtec EVO-X2のメモリは増設できる?」への答えはNO。Strix HaloやApple SiliconがLPDDR5Xをパッケージ直結で半田付けする理由と、DDR5 DIMM/SO-DIMM・オンボード実装との帯域・レイテンシ・拡張性のトレードオフを解説。買う前に容量を決めきる必要がある理由が分かります。
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結論:「GMKtec EVO-X2やMacのメモリは増設できる?」への答えはNO。 Strix Halo(Ryzen AI MAX+ 395)やApple SiliconはLPDDR5XをCPUパッケージのすぐ隣に半田付けしており、DIMMやSO-DIMMのような着脱スロットを持ちません。理由は単純で、超高速・低消費電力のメモリを成立させるには、最短配線で半田付けするのが最も有利だからです。その代償が「後から足せない・換えられない」という拡張性のなさ。だからこの種のマシンは、買う時点で必要な容量を決めきる必要があります。
検索で「strix halo メモリ 増設」「gmktec evo x2 メモリ 増設」と調べる人が増えています。背景には、ローカルLLM用途でStrix HaloやMac Studioが注目され、「まず小さい容量で買って後から足せばいい」という自作PCの常識が通じるのか、という疑問があります。結論はその常識が通じない、という話なのですが、なぜそうなるのかを物理実装から理解しておくと、容量選びで失敗しなくなります。Strix Haloの統合メモリそのものの解説はAMD Strix Halo の Unified Memory とは、帯域がローカルLLMの速度にどう効くかはメモリ帯域幅とローカルLLMのtok/sに分けてあるので、本記事は「物理実装と拡張性」に絞ります。
メモリの「載せ方」4種類を並べる
PCのメインメモリは、どう基板に載るかで拡張性も帯域も変わります。まず全体像を一枚で。
| 実装方式 | 主な採用例 | 着脱 | 帯域の傾向 | 拡張性 |
|---|---|---|---|---|
| DDR5 DIMM | デスクトップ | ◯(スロット) | 中 | 高い(増設・換装可) |
| DDR5 SO-DIMM | 一部ノート・ミニPC | ◯(一部機種) | 中 | 機種次第で可 |
| LPDDR5X オンボード半田 | 薄型ノート | ✕(基板直付け) | 中〜高 | 増設不可 |
| LPDDR5X オンパッケージ | Strix Halo / Apple Silicon | ✕(CPU近傍直付け) | 最高 | 増設不可 |
| (参考)GDDR7 | GPUのVRAM | ✕ | 超高(専用) | 別物(メインメモリではない) |
上から下へ行くほど「速く・省電力だが、着脱できない」方向に進みます。DDR5 DIMMは挿し替えできる代わりに帯域は中庸、LPDDR5Xオンパッケージは最高帯域の代わりに一切いじれない。Strix HaloとApple Siliconは、この表のいちばん下(オンパッケージ)に位置するのがポイントです。
なお最下段のGDDR7はGPUのVRAM用で、これも半田付けですがメインメモリとは別系統です(VRAMが増設できないのも同じ理由)。混同しやすいので、ここでは「メインメモリの載せ方」に話を限定します。
なぜLPDDR5Xは半田付けなのか
LPDDR5X(Low Power DDR5X)は、その名の通り「低消費電力で高速」を狙ったメモリです。これを最大限に活かすには、メモリをCPU/SoCのすぐ隣に、最短の配線で置く必要があります。理由は2つ。
- 帯域:Strix Haloは256bit級、Apple Mシリーズのハイエンドは512bit以上という広いメモリバスを持ちます。この広いバスを高クロックで安定動作させるには、配線が短いほど有利です。DIMMスロットを介すると配線が伸び、抜き差し機構ぶんの寄生容量も乗るため、LPDDR5Xの高速動作に必要な信号品質を保てません。
- 消費電力と省スペース:最短配線は信号を駆動する電力も小さく済み、薄型・小型の筐体に収めやすい。モバイルや小型SoCでLPDDR系が好まれる理由がここにあります。
つまり半田付けは手抜きでもケチでもなく、LPDDR5Xという高速・省電力メモリを成立させるための必然の選択です。その見返りとして得るのが帯域と省電力、失うのが「後から足せる・換えられる」という拡張性。この交換のうえに、Strix HaloやApple Siliconの「大容量・高帯域な統合メモリ」が成り立っています。
DIMMとの違いは「交換性 vs 性能」のトレードオフ
DDR5 DIMM(デスクトップ)やSO-DIMM(一部ノート)が着脱できるのは、スロットという「抜き差しできる接点」を持つからです。これは増設・換装という大きな自由を与えますが、その接点と配線距離が、LPDDR5Xが狙うような最高帯域には不利に働きます。
- DDR5 DIMM:交換できる。だから「まず16GBで買って後から32GBへ」が自作PCでは当たり前。帯域は中庸で十分速いが、LPDDR5Xのパッケージ直結ほどではない。
- LPDDR5X オンパッケージ:交換できない。だから容量は購入時に確定。代わりに帯域は最高水準で、これがローカルLLMで大きなモデルを高速に回す土台になる。
「増設できないのは不便」と感じるかもしれませんが、Strix HaloやMacを選ぶ理由がこの帯域と統合メモリにある以上、半田付けは欠点というより設計の一部です。容量別に何が動くかの一般論はPCメモリ 16GB / 32GB / 64GB の選び方も参考になりますが、こちらは増設前提のDDR5の話。Strix Halo / Macは「増設できない前提」で容量を決める、という発想の切り替えが要ります。
2026年の新潮流:着脱できる省電力メモリ(LPCAMM2)
「省電力メモリは半田付けで増設不可」という常識に、2026年は例外が出始めています。LPCAMM2は、LPDDR5Xをモジュール化して着脱可能にした新しい規格です。薄型ノートを中心に採用が広がりつつあり、「LPDDR系の省電力性」と「交換できる拡張性」の両立を狙っています。
ただし注意したいのは、LPCAMM2が出たからといってStrix HaloやApple Siliconが半田付けをやめたわけではないことです。これらのプラットフォームが狙う最高帯域(256〜512bit級のパッケージ直結)と、LPCAMM2のモジュール実装は設計思想が異なります。現時点では「薄型ノートで着脱できる省電力メモリの選択肢が増え始めた」段階であり、高帯域SoC側はまだパッケージ直結が主流です。とはいえ、将来「着脱できる大容量・高帯域メモリ」が普及する芽として、2026年は注目しておく価値のあるトレンドです。
実務的な結論:買う前に容量を決めきる
物理実装の話を、購入判断に落とし込むとこうなります。
- Strix Halo / Mac(Apple Silicon)は、買う時点で容量の上限を選べ。 64GBか128GBか、後で足せない以上、ここが意思決定の本番。ローカルLLM用途なら、VRAMに割ける容量が動かせるモデルの上限を決めるので、迷ったら一段上(128GB)を選ぶのが安全。
- GMKtec EVO-X2などのStrix Halo搭載ミニPCも同じ。 LPDDR5X半田付けで増設不可。モデル選定の段階で大容量構成を選んでおく。
- 「後から足す」を前提にしたいなら、DDR5 DIMMのデスクトップを選ぶ。増設の自由が欲しい用途と、最高帯域の統合メモリが欲しい用途は、最初から別のプラットフォームになる。
「安く小さく買って後で増やす」という自作PCの定石は、LPDDR5Xオンパッケージのマシンには通用しません。これは欠陥ではなく、高帯域・省電力という長所と表裏一体のトレードオフです。仕組みを理解したうえで、購入時に容量を決めきる。それがStrix HaloやMacで失敗しないための、いちばん大事な前提になります。
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よくある質問
- GMKtec EVO-X2のメモリは後から増設できる?
- できません。EVO-X2が搭載するStrix Halo(Ryzen AI MAX+ 395)のメモリはLPDDR5Xで、CPUパッケージ近傍に直接半田付けされており、DIMMやSO-DIMMのような着脱スロットがありません。これはEVO-X2に限らずStrix Halo搭載ミニPC全般、そしてApple Silicon搭載Mac全般に共通する仕様です。買う時点で必要な容量(64GB / 128GBなど)を選びきる必要があります。
- なぜLPDDR5Xは半田付けで、DDR5は挿せるの?
- LPDDR5Xの超高速・低消費電力を成立させるには、メモリをCPUのすぐ隣に最短配線で置く必要があり、DIMMスロットの抜き差し機構が生む寄生容量や配線長が高速動作の足を引っ張るからです。スロットは『交換できる』代わりに『信号品質と配線距離で不利』。半田付けは『交換できない』代わりに『最短配線で最高帯域・最小電力』。この交換性と性能のトレードオフが、両者を分けています。
- 増設できないなら容量はどう選べばいい?
- 用途の上限から逆算して、迷ったら一段上を選ぶのが鉄則です。ローカルLLMやクリエイティブ用途でStrix Halo / Macを買うなら、VRAMに割けるメモリ量が動かせるモデルの上限を決めるため、64GBで足りるか不安なら128GBを選ぶ、という判断になります。後から足せない以上、増設で帳尻を合わせる選択肢がないことを前提に容量を決めてください。
- 着脱できる省電力メモリ(LPCAMM2)も出てきている?
- はい。LPCAMM2はLPDDR5Xをモジュール化して着脱可能にした新しい規格で、薄型ノートを中心に2026年に採用が広がりつつあります。ただしStrix HaloやApple Siliconのような最高帯域を狙うパッケージ直結の実装とは設計思想が異なり、現時点でこれらのプラットフォームが半田付けからLPCAMM2へ全面移行したわけではありません。『着脱できる省電力メモリ』の選択肢が増え始めた段階、と捉えるのが正確です。