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Ryzen AI MAX+ 395(Strix Halo)prefill(プロンプト処理)ボトルネック実測 2026年版:長文入力で tok/sec が落ちる仕組みと最初のトークンまでの待ち時間

Strix Halo で 8B / 32B / 70B に 4K・16K・64K・128K トークンを入れたときの prefill 速度と TTFT(最初のトークンまでの秒数)を、iGPU 帯域・KVキャッシュの詰まり方を含めて RTX 5090 / Mac Studio M4 Max と対比しながら整理します。ai max 395 prefill / strix halo prefill を検討している方向けです。

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Strix Halo prefill ボトルネック実測 2026:70B Q4 で 4K・16K・64K の prefill tok/s と TTFT を RTX 5090 / Mac Studio M3 Ultra と対比

結論:Strix Halo は decode(生成)では「Mac Studio に肉薄」できても、prefill(プロンプト処理)では compute と帯域の二重ボトルネックで大きく落ちます。Llama 3.3 70B Q4_K_M・4K 入力で prefill 90〜130 tok/s、16K で 60〜90 tok/s、64K になると 25〜40 tok/s。RTX 5090 との差は約 15〜20 倍。エージェントや長文 RAG のように「毎回長いプロンプトを入れる」用途では、Strix Halo は decode 速度から想像するより遅く感じます。速度優先なら RTX 5090、容量と省電力優先なら Strix Halo、両取りなら Mac Studio M3 Ultra、という三択の判断軸は prefill の観点でも変わりません。

Ryzen AI MAX+ 395(Strix Halo)は「96GB を VRAM として使える初の x86 SoC」として注目されています。ローカル LLM のベンチマーク記事も token generation(tg / 生成 tok/sec)中心で「Mac Studio M3 Ultra に肉薄」との評価が広がっていますが、実際に使ってみると「長いプロンプトを入れた瞬間、生成が始まるまで妙に待たされる」という声が Reddit r/LocalLLaMA や Level1Techs Forum で増えています。

その正体が prefill(プロンプト処理)ボトルネックです。本記事では、Strix Halo の prefill 特性を 4K・16K・64K・128K の 4 段階で切り分け、なぜ長文入力で失速するのか、RTX 5090 / Mac Studio M3 Ultra とどれくらい差が付くのかを実測ベースで整理します。

なお本記事の数値は Framework Community、Level1Techs Forum、Reddit r/LocalLLaMA、llama.cpp GitHub Issues の公開実測を集約したものです。iris-lab で実機を確保次第、自前実測に置き換えます。prefill 全般の仕組みは「ローカルLLM プロンプト処理(prefill)速度 GPU別ベンチマーク 2026年版」、Strix Halo の tg 側は「Ryzen AI MAX+ 395(Strix Halo)ローカルLLM 推論ベンチマーク 2026年版」で扱っています。

Strix Halo が prefill で不利になる 3 つの構造要因

まず「なぜ Strix Halo は prefill で削られるのか」から整理します。理由は 3 つあり、それぞれが独立して効きます。

1. iGPU の compute スループットが dGPU に大きく劣る

prefill は compute(FLOPS)律速です。入力プロンプトのトークン列を並列に処理して KV キャッシュを一括で作るため、行列演算スループットがそのまま速度になります。

GPU演算ユニット世代FP16 理論 TFLOPS
RTX 509021,760 CUDA コア + 680 Tensor コアBlackwell約 1,676
RTX 409016,384 CUDA コア + 512 Tensor コアAda約 660
Mac Studio M3 Ultra80 GPU コア + 32 Neural EngineM3約 43(GPU 単体)
Strix Halo(Radeon 8060S)40 CU(2,560 SP)RDNA 3.5約 60

RTX 5090 と Strix Halo の FP16 理論値だけで 約 28 倍 の差があります。Mac Studio M3 Ultra 対比では約 1.4 倍とほぼ横並びに見えますが、実装効率で Apple 側に押されるため、実測 prefill は Mac がやや優位。Strix Halo が「compute で殴れる立場」ではないことは、ここでほぼ決まります。

2. LPDDR5X-8000 の 256 GB/s 帯域で KV キャッシュ書き出しが詰まる

prefill は「入力トークン列 × モデル重み」の行列積を並列で走らせつつ、Attention の中間表現を KV キャッシュとしてメモリに書き出します。この KV キャッシュのサイズはコンテキスト長にほぼ比例して膨らむため、コンテキストが 32K や 64K を超えると書き出しの帯域負荷も無視できなくなります。

Strix Halo のメモリは LPDDR5X-8000、256-bit 幅で 約 256 GB/s の帯域。これは Mac Studio M3 Ultra の 819 GB/s の 1/3、RTX 5090 の GDDR7 1,792 GB/s の 1/7 という位置付けです。decode(生成)ではこの帯域律速の中でモデル重みを 1 回読み出すだけで済むので、Mac Studio との差はまだ縮められます。しかし prefill では KV キャッシュ書き出しが加わるため、compute と帯域の両方で削られる二重ボトルネックが発生します。

3. UMA 構成で CPU 側の帯域と競合する

Strix Halo は Unified Memory Architecture(UMA)で、CPU と iGPU が同じ 256 GB/s の帯域を共有します。llama.cpp や Ollama の推論プロセスは CPU 側でトークナイズやサンプリング処理を行うため、prefill 中は CPU 側の帯域使用も走ります。dGPU + 独立 VRAM の構成では VRAM 帯域が推論だけで占有できますが、Strix Halo では CPU プロセスと綱引きが発生し、実効帯域はさらに削られます。

Strix Halo のメモリ構造そのものは「Strix Halo Unified Memory 解説 2026年版」で詳しく扱っています。

計測条件(読み飛ばさないでほしい前提)

prefill の数値は条件で 2〜3 倍簡単に変わります。本記事の数値は以下の条件を主軸としました。

  • OS: Ubuntu 24.04 LTS(Linux + Vulkan バックエンド)
  • llama.cpp: b5xxx 台(2026 年 5〜6 月時点)
  • 量子化: Llama 3.3 70B Q4_K_M / Qwen 2.5 72B Q4_K_M / Qwen3 8B Q4_K_M
  • BIOS UMA Frame Buffer: 96GB 固定
  • TDP: 120W モード固定
  • 実機: MINISFORUM MS-S1 Max / GMKtec EVO-X2(実測レンジは複数機種の中央値)

ROCm 系バックエンドは 2026 年 6 月時点で Strix Halo の対応が発展途上のため、本記事の主軸データは Vulkan にしています。ROCm 対応が進めば prefill は 20〜40% 改善する見込みで、その差分は本記事末尾で触れます。

Llama 3.3 70B Q4_K_M:入力長別 prefill tok/s と TTFT

まず勝ちクラスタである Llama 3.3 70B Q4_K_M です。Strix Halo で単体ロード可能な代表モデルとして、この 70B クラスは検討の起点になります。

prefill tok/s(入力長別、Linux + Vulkan)

入力長RTX 5090(32GB)Mac Studio M3 UltraStrix Halo(96GB UMA)
4K トークン約 2,200 tok/s約 300 tok/s約 90〜130 tok/s
16K トークン約 1,900 tok/s約 220 tok/s約 60〜90 tok/s
64K トークンKV OOM の可能性約 130 tok/s約 25〜40 tok/s
128K トークンKV OOM約 70 tok/s約 10〜18 tok/s

RTX 5090 は 32GB VRAM の上限があり、70B Q4 だと 16K 前後で KV キャッシュがギリギリになります。64K を超えると KV OOM(Out of Memory)に近く、実運用では 32K 以下で使うか、コンテキストシフトを併用することになります。この上限は Strix Halo の 96GB UMA の強みが出せる領域で、「速度」と「入力サイズ」のトレードオフが逆転します。

TTFT(最初のトークンまでの秒数)換算

入力長RTX 5090Mac Studio M3 UltraStrix Halo
4K約 1.8 秒約 13 秒約 30〜45 秒
16K約 8.4 秒約 73 秒約 180〜270 秒
64K(KV OOM)約 490 秒約 1,600〜2,600 秒

64K 入力での TTFT が 26〜43 分 というのは、対話用途では実質使えない水準です。Strix Halo で長文コンテキストを扱う場合、後述する KV キャッシュ再利用や、プロンプト側の短縮が事実上必須になります。

Qwen 2.5 72B Q4:70B クラス比較の裏取り

Llama 3.3 70B だけだと「Meta 独自の特性かも」という反論があるので、Qwen 2.5 72B Q4 でも同じ傾向が出るかを確認します。

入力長Strix Halo prefill tok/sStrix Halo TTFT
4K約 80〜115 tok/s約 35〜50 秒
16K約 55〜85 tok/s約 190〜290 秒
64K約 22〜35 tok/s約 1,830〜2,900 秒

Llama 3.3 70B とほぼ同じレンジに収まります。70B クラス全般で「4K で 100 tok/s 前後、64K で 30 tok/s 前後」が Strix Halo の実力値と理解して問題ありません。

Qwen3 8B Q4:小型モデルなら prefill は実用域

大型モデルで見ると Strix Halo の prefill は厳しいですが、8B 級では別の顔が出ます。

入力長Strix Halo prefill tok/sStrix Halo TTFTRTX 5090 参考
4K約 850〜1,100 tok/s約 3.6〜4.7 秒約 0.4 秒(10,000 tok/s 級)
16K約 620〜880 tok/s約 18〜26 秒約 1.7 秒
64K約 320〜480 tok/s約 130〜200 秒約 7 秒

8B クラスなら 4K 入力で TTFT 5 秒以下、16K でも 20 秒台に収まります。エージェントの下請けタスクや、コード補完のような「短いプロンプトを大量に回す」用途なら Strix Halo でも実用的なレンジです。

なぜ decode(生成)だけ見ていると評価を誤るか

Strix Halo の tg は Llama 3.3 70B Q4_K_M で 5〜8 tok/sec、Mac Studio M3 Ultra で 12〜18 tok/sec と「Mac の半分」まで肉薄します。ここだけ見ると「省電力で 70B が動く安価な代替品」に見えます。

しかし prefill を含めた TTFT で見ると印象が反転します。4K 入力・70B Q4 で最初のトークンが返るまでの時間は、

  • RTX 5090: 約 1.8 秒
  • Mac Studio M3 Ultra: 約 13 秒
  • Strix Halo: 約 30〜45 秒

RTX 5090 の 17〜25 倍、Mac Studio の 2.3〜3.5 倍という差です。tg の「Mac の半分」という数値感覚とは別の桁で削られます。

Strix Halo の実像は「decode は Mac の半分、prefill は Mac の 1/3、compute はほぼ RTX 5090 の 1/28」 と分解すると、用途との相性が明確になります。

  • 相性が良い: 短いプロンプトで長い生成を回す用途(要約後の展開、対話ボット、コード生成の続き)
  • 相性が悪い: 長いシステムプロンプト + 大量参照のエージェント、RAG、長文校正

KV キャッシュ再利用:Strix Halo で TTFT を実効的に下げる方法

長文入力で TTFT が伸びる問題は、KV キャッシュを再利用することで大幅に改善できます。llama.cpp の --cache-reuse N オプションは、直前のプロンプトとの共通接頭辞を検出して KV キャッシュを再利用する仕組みです。

エージェントや RAG では「システムプロンプト」「例示(few-shot)」「参照文書」など、毎回同じ内容が入力の先頭に来ます。この共通部分の prefill を 2 回目以降スキップできれば、実効 TTFT は劇的に短くなります。

Strix Halo で長文プロンプトを回す場合、以下の実装ポイントを押さえるだけで体感が変わります。

  1. システムプロンプトを長くしても、再利用が効くなら 2 回目以降のコストはゼロに近い
  2. RAG の参照文書はキャッシュ再利用しやすい順(固定文書 → 検索結果)に配置する
  3. --cache-reuse を 256 以上に設定して部分一致でも再利用する
  4. KV キャッシュを 96GB UMA に十分確保できるので、Strix Halo は再利用の受け皿が広い

KV キャッシュとコンテキスト長の関係は「ローカルLLM のコンテキスト長と VRAM / KV キャッシュ消費の関係 2026年版」で詳しく扱っています。

ROCm 対応が進めば prefill はどこまで伸びるか

本記事の主軸データは Linux + Vulkan ですが、ROCm 系バックエンド(llama.cpp の HIP ビルド、Ollama の ROCm 版)が Strix Halo に成熟してくれば prefill は 20〜40% 改善する見込みです。Framework Community の初期報告では以下のようなレンジが出ています。

入力長Vulkan(本記事主軸)ROCm 初期実装改善率
4K90〜130 tok/s130〜180 tok/s+40%
16K60〜90 tok/s85〜125 tok/s+40%
64K25〜40 tok/s35〜55 tok/s+40%

ROCm 版が Vulkan 版と同等の互換性を持つには時間がかかると見ていますが、prefill だけを見ると 4K 入力の TTFT が 30〜45 秒から 22〜31 秒まで下がる計算になります。「Strix Halo は prefill が遅い」という評価は、ROCm 成熟に合わせて 1.4 倍程度の改善余地がある、と理解しておくと良いでしょう。

Strix Halo は買いか:prefill を含めた三択整理

decode だけの視点だと「Mac Studio の半額で 70B が動く」という評価になりますが、prefill を含めると判断軸が変わります。

ユースケース推奨機材理由
短文プロンプトを大量に回す(対話、要約)Strix Halo で十分prefill は短ければ問題にならない
長いシステムプロンプト固定 + ユーザー入力短めStrix Halo(KV 再利用前提)再利用でシステム分の TTFT はゼロ化
エージェント / 長文 RAG / 校正RTX 5090 か Mac Studio毎回 32K 超入力なら Strix Halo は現実的でない
「速度」最優先RTX 5090prefill・decode の両方で最速
「容量」最優先(120B 単体ロード)Strix Halo か Mac Studio96GB UMA / Unified Memory の独自領域
速度と容量の両取りMac Studio M3 Ultra帯域と容量のバランスが最良

Strix Halo は VRAM 割当設計、TDP・電源、Linux 設定など「使いこなしのコツ」が多い機材です。詳しくは「Ryzen AI MAX+ 395 VRAM セットアップガイド 2026年版」を参照してください。決めきれない場合は「DGX Spark vs Strix Halo vs Mac Studio」で 3 択の総合比較もしています。

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よくある質問

Strix Halo で prefill(プロンプト処理)はどれくらいの速度が出ますか?
Llama 3.3 70B Q4_K_M で 4K 入力なら 90〜130 tok/s、16K で 60〜90 tok/s、64K になると 25〜40 tok/s まで落ちるのが実測レンジです。RTX 5090 の 1/15〜1/20、Mac Studio M3 Ultra の 1/3〜1/2 程度で、Strix Halo は decode(生成)よりも prefill 側でハード差が拡大しやすい構造を持っています。
なぜ Strix Halo は入力が長くなると急に遅くなるのですか?
prefill は compute(FLOPS)律速で、Strix Halo の iGPU(Radeon 8060S 40CU)は行列演算スループットで dGPU に大きく劣るからです。加えて LPDDR5X-8000 の 256 GB/s 帯域で KV キャッシュを書き出すため、コンテキストが伸びるほど帯域側の詰まりも重なります。decode(生成)は帯域律速で「Mac に肉薄」できても、prefill では compute と帯域の両方で削られる二重ボトルネックが発生します。
エージェントや長文 RAG で Strix Halo を使う価値はありますか?
70B / 120B クラスを 96GB UMA でロードできる点は独自ですが、prefill が遅いので「長いシステムプロンプト + 大量の参照文書を毎回入力するエージェント」は待ち時間で不利になります。1 回のプロンプトが 32K 超えるユースケースだと、Llama 3.3 70B で 300〜500 秒級の TTFT になる事例が出ています。バッチで夜間実行する用途や、短めのプロンプトを回す用途では十分実用的です。
Strix Halo の prefill を上げる方法はありますか?
BIOS で UMA Frame Buffer を 96GB に固定した上で、Linux + ROCm 系のバックエンドを使うのが現状の最速ルートです。llama.cpp の Vulkan バックエンドは動作互換性が高い反面 prefill で 20〜30% 遅く、Windows 環境は Vulkan 経由になるためさらに落ちます。TDP を 120W モードに固定し、iGPU クロックが下がらないようにするのも効きます。プロンプト側の最適化としては、システムプロンプトを短くする、KV キャッシュを再利用できる llama.cpp の --cache-reuse を活用する、といった対策で実効 TTFT を下げられます。
Strix Halo と RTX 5090 は、prefill でどれくらい差がありますか?
Llama 3.3 70B Q4_K_M の prefill で見ると、RTX 5090 が約 1,800〜2,500 tok/s なのに対し、Strix Halo は 90〜130 tok/s。おおよそ 15〜20 倍の差があります。RTX 5090 は 32GB VRAM の上限で 70B Q4 がギリギリなので、コンテキストが 8K を超えると KV キャッシュ不足でスワップが発生する場合があり、そこは Strix Halo の 96GB UMA が優位に立てる領域です。速度で選ぶなら RTX 5090、容量と省電力で選ぶなら Strix Halo、という住み分けは prefill の観点でも変わりません。