ローカル音声合成(TTS)・リアルタイム音声対話向けPC構成ガイド 2026年版:Style-Bert-VITS2 / AivisSpeech / CosyVoice を快適に動かすVRAMとCPU
ローカルTTS・音声対話を自宅で動かすPC構成を用途別に解説。Style-Bert-VITS2 / AivisSpeech / CosyVoice / Qwen3-TTS の必要VRAM(2〜8GB)、リアルタイム性(RTF)、Whisper→LLM→TTS の音声対話パイプラインを1台で回すVRAM配分まで、最小構成から推奨構成まで具体的に示します。
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結論:日本語のローカルTTS(音声合成)を試すだけなら、推論時のVRAMは2〜3GBで足りるので、RTX 3060 12GB クラス、あるいは AivisSpeech のように CPU でも動く構成で十分です。音声クローンや「マイクで話す→AIが声で返す」リアルタイム音声対話まで1台で回したいなら、Whisper(STT)+ ローカルLLM + TTS を同時に載せられる 16GB VRAM 以上(RTX 4070 Ti SUPER / 5070 Ti クラス)が現実的な下限。高品質な音声をバッチ大量生成するなら RTX 4090 / 5090 です。
ローカルLLMの世界では「テキストを読む(Whisper による文字起こし)」側は Whisper 文字起こしベンチマーク や Whisper 文字起こし・要約PCガイド でカバーしてきました。一方で「テキストを声にする(TTS)」、そして「声で対話する」側のPC構成は、2024年後半から2026年にかけて環境が一気に整ったにもかかわらず、まとまった情報が少ないままです。
本記事は、Style-Bert-VITS2 / AivisSpeech / CosyVoice / Qwen3-TTS という2026年6月時点の主要ローカルTTSを「自宅PCで快適に動かす」ことだけを前提に、必要VRAM・リアルタイム性(RTF)・用途別の構成を整理します。
まず用語:RTF(リアルタイムファクター)とは
TTSのPC要件を考えるとき、最重要の指標が RTF(Real-Time Factor、リアルタイムファクター) です。
- RTF = 音声を生成するのにかかった計算時間 ÷ 生成された音声の長さ
- RTF < 1.0 なら「再生に間に合う速度で生成できている」= リアルタイム可能
- RTF 0.3 なら、10秒の音声を3秒で生成できる(余裕あり)
- RTF 2.0 なら、10秒の音声に20秒かかる(リアルタイム対話には不向き、ナレーション等のバッチ生成向き)
VRAMが足りていても、GPUが非力だとRTFが1.0を超えて「対話がもたつく」ことになります。逆に、ナレーション動画用に「品質重視で時間はかけてよい」なら、RTFが1を多少超えても問題ありません。用途がリアルタイム対話かバッチ生成かで、必要なPCは変わる、というのがこの記事の背骨です。
主要ローカルTTSの特徴と必要VRAM(2026年6月時点)
| エンジン | 言語・特徴 | 推論VRAM目安 | 音声クローン | リアルタイム性 |
|---|---|---|---|---|
| Style-Bert-VITS2 | 日本語品質が高い。JP-Extra モデルで自然 | 約 2〜3GB(CPUでも可) | 数十秒の音声で可 | RTFは小さく対話向き |
| AivisSpeech | Style-Bert-VITS2 系をVOICEVOX互換で手軽に。GUI完結 | CPU〜軽量GPUで可 | AIVM/AIVMX モデル利用 | CPUでも実用域 |
| CosyVoice 2 | 多言語・ストリーミング・ゼロショット音声クローン | 0.5Bモデルで約 8GB | ゼロショット(数秒の参照音声) | ストリーミング対応で低遅延 |
| Qwen3-TTS | 多言語・自然な抑揚。クラウド/ローカル両系統 | モデル規模次第(中〜大) | モデル次第 | モデル次第 |
ポイントは、日本語のTTSは思ったよりずっと軽いということです。Style-Bert-VITS2 の推論はVRAM 2〜3GB程度で動き、CUDAが使えない環境では CPU 推論(--device cpu)にも対応しています。AivisSpeech に至っては VOICEVOX 系の使い勝手で、CPU や軽量GPUでも実用的な速度が出ます。「とりあえず日本語で自然な音声合成を試したい」なら、ハイエンドGPUは不要です。
一方で、多言語・ゼロショット音声クローン・ストリーミング生成まで踏み込むと CosyVoice 2 のような大きめのモデルが必要になり、VRAMも8GB級に上がります。CosyVoice 2 はストリーミング合成に対応しており、最初の音声チャンクが返るまでの遅延(first-package latency)が短いのが特徴で、音声対話のレスポンスに向いています。
注:上記VRAMは推論(音声生成)時の目安です。自分の声でモデルを**学習(ファインチューニング)**する場合は別物で、Style-Bert-VITS2 の学習はバッチサイズに応じて VRAM が増えます(おおよそ「4 + 2×バッチサイズ」GB が目安。バッチ4で12GB前後)。学習までやるなら 12〜24GB VRAM を見ておくと安心です。
用途別PC構成 3段階
構成1:日本語TTSを個人で試す(CPU〜RTX 3060 12GB)
「自作の読み上げ、ゲーム実況の合成音声、動画のナレーション下書き」あたりが目的なら、これで十分です。
| パーツ | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| GPU | RTX 3060 12GB / RTX 4060(または無しでCPU運用) | Style-Bert-VITS2 推論は2〜3GBで足りる。12GBあれば学習も視野 |
| CPU | Ryzen 5 / Core i5 クラス | AivisSpeech の CPU 推論もここで実用域 |
| メモリ | 16〜32GB | モデル+OSで問題なし |
| ストレージ | NVMe SSD 1TB | モデルと生成物の保存。速度は Gen4 で十分 |
Style-Bert-VITS2 / AivisSpeech はこのクラスで快適に動きます。GPUを積めば学習(自分の声・キャラ音声の作成)まで射程に入りますが、推論だけならCPUでも回るのが日本語TTSの強みです。SSDの世代差はここでは効きません(Gen4 vs Gen5 SSD の違い)。
構成2:音声クローン+リアルタイム音声対話を1台で(RTX 4070 Ti SUPER / 5070 Ti、VRAM 16GB)
「マイクで話しかけると、AIが考えて、声で返してくる」という音声対話アシスタントを自前で組む場合、ボトルネックは 3つのモデルを同時にVRAMへ載せることです。
音声対話パイプラインは次の3段で構成されます。
- STT(音声→テキスト):Whisper でマイク入力を文字起こし
- LLM(テキスト→テキスト):ローカルLLMが応答を生成
- TTS(テキスト→音声):Style-Bert-VITS2 / CosyVoice が声で返す
これを1枚のGPUに同居させるVRAM配分の目安が次です。
| 役割 | モデル例 | VRAM目安 |
|---|---|---|
| STT | faster-whisper(large-v3, int8) | 約 1.5〜3GB |
| LLM | 8B 級 Q4_K_M(応答生成) | 約 5〜6GB |
| TTS | Style-Bert-VITS2 | 約 2〜3GB |
| KVキャッシュ・余裕 | (特定なし) | 約 2〜3GB |
| 合計 | (全体) | 約 12〜15GB |
つまり 16GB VRAM のGPU(RTX 4070 Ti SUPER / 5070 Ti クラス)があれば、STT + 8B LLM + TTS を1台に収めて音声対話を回せる計算になります。これが「1台で音声対話」の現実的な下限です。CosyVoice 2 を使う場合はTTS側が8GB級に膨らむため、LLMを小さめ(3B〜7B)にするか、24GB VRAM(RTX 4090 / 5090)に上げると安定します。
このパイプラインは、Whisper 文字起こし・要約PCガイド で扱った「STT→要約」の延長線上にあります。要約の代わりに会話用LLMを置き、出力をテキストではなく音声に変えたもの、と捉えると構成が掴みやすいはずです。LLM側の選定は ローカルLLMを動かすPCの最低スペック も参照してください。
| パーツ | 推奨 |
|---|---|
| GPU | RTX 4070 Ti SUPER 16GB / RTX 5070 Ti 16GB |
| CPU | Ryzen 7 / Core i7 クラス |
| メモリ | 32GB(64GB あると余裕) |
| ストレージ | NVMe SSD 1〜2TB |
構成3:高品質音声のバッチ大量生成(RTX 4090 / 5090、VRAM 24〜32GB)
ナレーション動画、オーディオブック、キャラクターボイスの大量生成など「品質最優先・本数多め」の用途では、VRAMと演算性能に余裕のある RTX 4090(24GB)/ RTX 5090(32GB)が効きます。
- 複数話者・複数モデルを切り替えながら並列生成しても VRAM が枯渇しにくい
- CosyVoice 2 のような大きめモデルと、別のLLM・画像生成を同居させても余裕
- 音声クローンの学習(ファインチューニング)も快適
この帯域では、TTS単体性能よりも「他のAIワークロード(LLM・画像生成・動画生成)と共存できるか」が選定軸になります。GPUのVRAM容量とモデルの関係は VRAM容量別・動かせるモデル早見表 に整理しています。
よくある誤解:「TTSにはハイエンドGPUが要る」は半分間違い
画像生成や70B級LLMの印象から「AI音声にも強力なGPUが必須」と思われがちですが、日本語TTSの推論はむしろ軽い部類です。重くなるのは次のケースです。
- 音声対話で3モデルを同居させるとき(STT+LLM+TTSの合算でVRAMが効く)
- 大きめの多言語モデル(CosyVoice 2 等)を使うとき
- 自分でモデルを学習するとき(バッチサイズ次第でVRAMが伸びる)
- 大量バッチ生成で並列度を上げるとき
逆に言えば、「日本語で1キャラ分の音声を、リアルタイムでなくてもいいから合成したい」だけなら、手持ちのミドルレンジGPU、場合によってはCPUだけでも始められます。まず構成1で試し、対話やクローンに踏み込む段階で構成2・3へ上げる、という順序が無駄がありません。
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TTSを試す(構成1)
- RTX 3060 12GB を Amazon.co.jp で見る:推論2〜3GBの日本語TTSに余裕。学習も視野に入る入口GPU
音声対話を1台で回す(構成2)
- RTX 4070 Ti SUPER 16GB を Amazon.co.jp で見る:STT+8B LLM+TTS を同居できる16GBの実用下限。Blackwell世代なら RTX 5070 Ti 16GB が同容量の選択肢
高品質バッチ生成(構成3)
- RTX 4090 24GB を Amazon.co.jp で見る:複数モデル同居・大量生成に余裕の24GB。さらに CosyVoice 2+LLM+他ワークロード共存まで見据えるなら RTX 5090 32GB
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