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Windows vs Linux でローカルLLMはどっちが速いか 2026年版:WSL2 vs Ubuntu native の tok/sec を整理する

ローカルLLM を Windows native・WSL2・Linux native の3環境で動かしたとき、tok/sec はどれだけ違うのか。NVIDIA GPU では3者ほぼ同等で、Windows native も WSL2 も Linux native の90〜100%。差が出るのは ROCm(AMD GPU)と巨大モデルのロード時間という、2026年の現実解を実測ベンチの傾向から整理します。

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Windows vs Linux でローカルLLMはどっちが速いか 2026:WSL2 vs Ubuntu native の tok/sec 整理

結論:NVIDIA GPU を使う限り、Windows native・WSL2・Linux native で tok/sec はほぼ変わりません。各種公開ベンチでは Windows native vs WSL2 が誤差レベル、WSL2 は Linux native の90〜100%、と報告されています。生成(decode)が GPU 側のメモリ帯域で律速されるためで、OS を入れ替えても速くなりません。例外は AMD GPU(ROCm の Windows 対応がまだ限定的)と、巨大モデルの初回ロード時間(OS よりも SSD と RAM の構成で決まる)の2点だけ。「Windowsで完結したい人は WSL2 で十分、Linux移行で得られる速度メリットはほぼ無い」というのが2026年の現実解です。

「ローカルLLMをやるなら Linux のほうが速い」。これは2024年頃まで広く信じられていた感覚で、間違いではありませんでした。当時は WSL2 の GPU パススルーが不安定で、Windows 版の llama.cpp / Ollama も Linux ビルドより一歩遅れて出る、というのが普通でした。

しかし2026年現在、状況は大きく変わっています。NVIDIA ドライバ555〜575系で WSL2 の CUDA パススルーが完成形に近づき、Ollama / LM Studio / llama.cpp の Windows ビルドも Linux 版と同時期にリリースされるようになりました。この記事では、Windows native・WSL2・Linux native の3環境で tok/sec がどう変わるのかを、公開ベンチの傾向ベースで整理します(自前の新規実測ではない部分は明示します)。OS を入れ替える前に、本当に意味があるのかを見極めてください。

結論:NVIDIA GPU では3環境ほぼ同等

まず最重要の事実から。RTX 5090 / RTX 4090 / RTX 5080 など NVIDIA GPU を使う限り、Windows native・WSL2・Ubuntu native の tok/sec はほぼ同じです。公開されている各種ベンチ(Windows Central の RTX 5080 + Ollama 検証、DEV Community の Windows vs WSL 比較、insiderLLM のドキュメントなど)から傾向を整理すると、以下のようになります。

環境NVIDIA GPU の Llama 3 8B Q4_K_M 想定 tok/sec
Ubuntu 24.04 native(CUDA 12.x)基準(100%)
WSL2(Ubuntu 24.04 on Windows 11)約90〜100%(多くのモデルで誤差レベル)
Windows native(Ollama / LM Studio)約87〜100%(Linux native 比で最大10〜13%差)

ポイントは、**差があるのは「OS 起因」ではなく「ランタイムのビルド差」**であることです。Windows 版の llama.cpp は CUDA Graphs の最適化が一部の Linux 版より遅れて入る、Ollama の Windows 版は CUDA カーネルのプリコンパイルバージョンが微妙に異なる、といった小さな差が積み重なる結果10%程度になるだけで、OS の I/O やプロセススケジューラが律速になっているわけではありません。

なぜ差が出ないのか:decode は GPU メモリ帯域律速

LLM 推論には大きく分けて prefill(プロンプト処理)decode(トークン生成) の2フェーズがあります。

  • decode:1トークンずつ生成する逐次処理。GPU の VRAM から重みをまるごと読み出しながら計算するため、メモリ帯域がそのまま律速要因。RTX 5090 のメモリ帯域 約1.8 TB/s が天井で、ここに CPU や OS のレイヤーは関わってこない
  • prefill:プロンプトを一気に処理。GPU の演算性能(TFLOPS)が効くフェーズ。こちらも GPU 側で完結する

つまり、ローカルLLM の主役である decode 速度(生成中の tok/sec)は、ほぼ純粋に「GPU の VRAM 帯域と量子化フォーマット」で決まります。CPU / RAM / OS / ストレージは、GPU の足を引っ張らない限りどれを選んでも結果は同じです。詳しくは「VRAM とは何か。ローカルLLM推論で必要な量の決まり方 2026年版」「LLM プロンプト処理(prefill)ベンチマーク 2026年版」もあわせてどうぞ。

環境別の現状:2026年6月時点

それぞれの選択肢を「どこが向いていて、どこに落とし穴があるか」で整理します。

Windows native(Ollama / LM Studio)

  • 向いている人:Linux を触らずに、最小限の操作でローカルLLMを動かしたい
  • 強み:インストーラ1本で動く(Ollama for Windows / LM Studio)、起動と停止が GUI で完結、Windows のフォントや IME がそのまま使える
  • 弱み:vLLM が(公式には)動かない、Linux 専用の最新ライブラリ(Triton、Flash Attention の特定ビルド、KV cache 量子化系の最新オプション)は使えない場合がある
  • 想定 tok/sec:Linux native 比で 約87〜100%。Llama 3 8B Q4_K_M で115〜125 tok/s(RTX 4090 想定、ngl=99、batch 1)あたり

Ollama / LM Studio で会話するだけなら、Windows native で何の問題もありません。差が出るのは「Ollama / LM Studio から外に出たいとき」だけです。

WSL2(Ubuntu on Windows 11)

  • 向いている人:Windows をホストにしつつ、Linux 専用ツールも使いたい
  • 強み:CUDA パススルーが安定(NVIDIA ドライバ555〜575系)、Linux native の tok/sec を 90〜100% 再現、vLLM・Triton・最新 llama.cpp ビルドも使える
  • 弱み:初回セットアップが Windows native よりひと手間(WSL2 の有効化、CUDA Toolkit のインストール)、メモリ周りで .wslconfig の調整が必要なことがある
  • 想定 tok/sec:Linux native 比で 約90〜100%(Llama 3 8B Q4_K_M で122〜128 tok/s 程度)

WSL2 は2024年頃の「不安定」「Linux に比べて遅い」というイメージが残っている人が多いですが、2026年6月時点では実用上 Linux native と区別がつきません。

Ubuntu native(または Linux native)

  • 向いている人:マルチGPUで vLLM をスループット最大化したい、ROCm を使う、サーバー用途で24時間運用したい
  • 強み:vLLM の TP=N が一番素直に動く、ROCm / CUDA / Triton 含めてすべての最新ライブラリが最速で入る、サーバー用途で安定
  • 弱み:Windows の業務アプリ(Office / Adobe / 各種 IME)が動かない、Wayland / X11 の選択など最初の調整が増える
  • 想定 tok/sec:基準値(Llama 3 8B Q4_K_M で122〜128 tok/s 程度)

「2台分の SSD 空きがあるなら、デュアルブートで両方を持っておく」が、AI 開発機として一番運用が楽になる構成です。24時間稼働の母艦を Linux で組む場合の構成は「自宅ローカルLLMサーバー構築ガイド 2026年版」で扱っています。

OS よりも先に効く要因:モデルロード時間

OS を入れ替えて速くしたい人が、多くの場合「速度の不満」と思っているものの正体は、実は モデルの初回ロード時間 だったりします。これは OS よりも SSD の世代と容量、システム RAM の容量で決まります。

モデルサイズGen4 SSD でのロードGen5 SSD でのロード
Llama 3.3 70B Q4_K_M約 40GB約 6.5 秒約 3.5 秒
Qwen 2.5 72B Q5約 50GB約 8.0 秒約 4.3 秒
DeepSeek-V3 Q4約 85GB約 13.5 秒約 7.2 秒

1回のロード時間は数秒〜10秒台ですが、複数モデルを切り替えながら作業する場合、ロード時間は1日に何分も累積します。Windows と Linux でこの数値はほぼ同じ(OS 側のキャッシュが効くと多少差が出る程度)なので、ここを縮めたいなら OS ではなく Gen5 SSD(Samsung 9100 PRO など)+ 64GB 以上のシステム RAM に投資するのが正解です。詳しくは「Gen4 vs Gen5 SSD の違いと体感差 2026年版」「ローカルLLM向け SSD・ストレージ構成ガイド 2026年版」を参照してください。

ROCm(AMD GPU)の場合は話が変わる

ここまで NVIDIA GPU を前提に書きましたが、AMD GPU(ROCm)を使う場合は Windows と Linux の差が大きく出ます

  • ROCm の Windows 対応:2026年に入って Radeon AI PRO R9700 とともに Windows 版 ROCm が拡充されつつあるものの、対応するモデル・ランタイムはまだ限定的。Linux 版 ROCm が先に新機能を取り込み、Windows 版は数ヶ月遅れる、というパターンが続いている
  • llama.cpp の Vulkan バックエンド:Windows でも AMD GPU を一定速度で動かせるが、ROCm/CUDA に比べると最適化レベルが下がるケースがある
  • Linux native + ROCm:AMD GPU の本来の性能を引き出せる組み合わせ。R9700 や Strix Halo(Ryzen AI Max+ 395)でローカルLLMを回すなら、Ubuntu 24.04 + ROCm が現状のベストプラクティス

AMD GPU でローカルLLMを本気で回すなら、Linux native か WSL2 + ROCm を前提に組むのが2026年6月時点の現実解です。詳しくは「ROCm vs CUDA ローカルLLM 2026年版」「Radeon AI PRO R9700 はローカルLLM の選択肢になるか 2026年版」も参照してください。

移行の閾値:何 tok/sec の差なら OS を変える価値があるか

「10%差ならどうせ気にならない」のか、「10%でも積み重なれば意味があるのか」。これは利用パターンで答えが変わります。

  • 対話用途(チャットUIで会話):10〜20 tok/sec の差は体感ほぼゼロ。OS を入れ替えるコストに見合わない
  • エージェント・コード生成(連続して大量トークンを出す):10%差が累積で効く。Linux native は検討の余地あり
  • サーバー用途・多人数の同時接続:vLLM の TP=N が安定して動く Linux native 一択。WSL2 でも代替可だが、本番運用は Linux native が読みやすい
  • 個人開発で「とりあえず動けばいい」:Windows native が一番手間が少ない。困ったら WSL2 を後から足すで十分

要するに「サーバー用途以外は OS で速度を稼ぐ意味は薄い」が結論です。GPU を1ランク上げる(RTX 4090 → 5090)ほうがリターンは大きい。GPU 選びは「ローカルLLM 用 GPU 選び方ガイド 2026年版」を参照してください。

マルチGPU・vLLM のスループット用途では Linux 一択

NVIDIA GPU を1枚で使うなら OS は何でもいい、と書きましたが、マルチGPU + vLLM の TP=N(tensor parallel)構成では Linux native が圧倒的に楽です。

  • vLLM の Windows native は2026年6月時点でも公式サポート外。WSL2 経由なら動くが、マルチGPUの NCCL 設定で手間がかかる
  • マルチGPUの場合、GPU 間通信が PCIe 経由で頻繁に起きるため、ホスト OS の挙動が結果に出やすい
  • 24時間運用するなら Windows Update の強制再起動を切る手間も馬鹿にならない

RTX 5090 を2枚挿してスループットを稼ぎたい場合の実態は「RTX 5090 2枚挿しマルチGPUでローカルLLMは本当に速くなるのか」で扱っています。マルチGPUの母艦 CPU 選びは「Threadripper 9000(Zen 5)はローカルLLM・AI開発で買いか 2026年版」も合わせてどうぞ。

まとめ:用途別の現実解

用途推奨 OS理由
Ollama / LM Studio で会話するだけWindows native一番手間が少ない、速度差は誤差
Windows をホストに使いつつ Linux ツールも触るWindows + WSL2Linux native の90〜100%、ツールを両取り
1枚 GPU でしっかり開発・エージェントを回すWindows + WSL2 or Linux native体感差は無いので好み
マルチGPU + vLLM でスループット狙うUbuntu 24.04 nativevLLM / NCCL が一番素直に動く
24時間稼働の自宅 LLM サーバーUbuntu 24.04 native安定性・運用コスト最小
AMD GPU(ROCm 利用)Ubuntu 24.04 native または WSL2+ROCmWindows 版 ROCm はまだ限定的

「Windows で完結したいけど速度が心配」という人へは、まず WSL2 を入れて Ubuntu の Ollama / llama.cpp を動かすのが、コストと速度の両面で最も合理的です。Linux native に移行する閾値は「マルチGPU + vLLM を本格運用する」「ROCm を使う」「24時間サーバーで安定運用したい」のいずれかが要件に入ったとき、と覚えておいてください。

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よくある質問

Windows と Linux でローカルLLMの tok/sec はどれくらい違う?
NVIDIA GPU の llama.cpp / Ollama を使う限り、Windows native ≒ WSL2 ≒ Linux native でほぼ差が出ません。各種公開ベンチでは Windows native vs WSL2 が誤差レベル(多くて10〜13%差)、WSL2 は Linux native の90〜100%、と報告されています。これは生成(decode)が GPU 側のメモリ帯域で律速されていて、OS のスケジューラやストレージは律速要因に入ってこないためです。差が明確に出るのは AMD GPU で ROCm を使う場合と、巨大モデルの初回ロード時間です。
Linux に移行したほうが ローカルLLM は速くなりますか?
NVIDIA GPU を使うなら、Linux に移行しても tok/sec はほとんど変わりません。速さを求めて OS を入れ替えるより、GPU のグレードを上げるかモデル / 量子化を見直すほうがリターンが大きい場合がほとんどです。一方、AMD GPU で ROCm を使う場合は Windows 版 ROCm の対応モデルがまだ限定的なので、Linux native のほうが現実的に速くなります。Windows で完結したい人はまず WSL2 を入れて Ubuntu の Ollama / llama.cpp を動かすのが、コスト・速度の両面で合理的です。
WSL2 を入れる価値はある?素の Windows のままでもいい?
Ollama / LM Studio で会話するだけなら素の Windows で十分です。WSL2 を入れる価値があるのは、Linux 専用の AI ツール(vLLM、ROCm 上の特定ライブラリ、最新の llama.cpp ビルド、Python の Triton 系など)を使いたいとき。WSL2 の GPU パススルーは安定していて、NVIDIA ドライバ555〜575系では Linux native とほぼ同等の性能が出ます。Windows native と WSL2 を併用しておけば、用途で使い分けられます。
ROCm(AMD GPU)の場合は Linux 一択?
現状はほぼ Linux 一択です。Radeon AI PRO R9700 などのAMD GPU でローカルLLMを動かす場合、ROCm の正式サポートは Linux(Ubuntu 22.04 / 24.04 など)が中心で、Windows 版 ROCm はリリース直後で対応モデル・対応ランタイムが限定的です。Windows で完結したいなら DirectML 経由(llama.cpp の Vulkan バックエンド)という選択肢もありますが、CUDA + NVIDIA 同等の速度は出にくいのが2026年の現状です。AMD GPU で本格的にローカルLLMを回すなら、Linux native か WSL2 + ROCm を前提に組むのが現実解です。